特集労災保険制度の在り方研究会の中間報告書 ①
〈総論・適用関係〉
「家事使用人」と「農林水産業」への 労災保険法の強制適用などを提言
今後の労災保険制度の在り方や労災保険制度の現代的課題を包括的に検討することを目的に検討を重ねてきた「労災保険制度の在り方に関する研究会」(座長・小畑史子京都大学大学院人間・環境学研究科教授。以下「研究会」)が、令和7年7月30日、中間報告書(以下「報告書」)をとりまとめた。 報告書は、研究会での議論の中で提起された労災保険制度の【適用】、【給付】、【徴収】の場面における各論点について、①見直しが必要と思われる点、②さらなる議論や検証が必要と思われる点、③労使での議論が期待される点――などについて、一定整理を行ったもの。【適用】関係では、「家事使用人」や現行制度では暫定任意適用事業である小規模な個人経営の「農林水産業」について、労災保険法を強制適用することなどを提言している。 報告書は、現時点における議論の到達点といえるものだが、「労災保険制度の適用範囲の考え方」や「遺族(補償)等年金の制度趣旨」、「メリット制における算定対象の取扱い」などについては、結論に至らず、引き続き、働く者や働き方に関する社会の動向や関係制度の状況を注視しながら、中長期的に検証・検討を行うべき論点も残されているとしている。報告書では、「その意味で、本報告書は『中間報告』としての位置づけであり、今後も、研究会のような労災保険制度に関する検証・議論の場が設けられることを要望する」とした。 また、報告書では、厚生労働省に対して、「今後、早期の見直しが求められる事項や早期に検討に着手することが望まれる点について、公労使から成る労働政策審議会において更なる議論を行い、あるいは法制的観点や実務上の観点からの検討・検証を進めることが必要である」と求めている。 これを受けた同省は、報告書の概要を令和7年8月7日開催の「第118回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会」(部会長・小畑史子京都大学大学院人間・環境学研究科教授。以下「部会」)に報告し、同日から、部会における検討を開始した。同省は、関係する労災保険法の改正案を令和8年の通常国会に提出することを目指すものとみられる。なお、中長期的に検証・検討を行うべき論点等に関しては、令和8年以降、研究会にて検討が再開される見通しだ。 今号では、主に報告書の「はじめに」と「I 適用関係」の内容をみていく。
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