労働判例研究差戻審 判例解説
「名古屋自動車学校事件(差戻審)」(名古屋高裁 令和8年2月26日判決)
定年前後における基本給と賞与の相違にかかる不合理性
性質と目的を検討した上で性質の同質性を理由に一部不合理と判断
「名古屋自動車学校事件(差戻審)」(名古屋高裁 令和8年2月26日判決。以下「本判決」)は、定年前後の基本給・賞与の相違が旧労契法20条に照らして不合理かを判断した最高裁判決(令和5年7月20日。本誌第2147号(2023年10月1日付)「最高裁判例解説」掲載。以下「本件最高裁」)を受けた差戻審(※参照)である。 本件最高裁は、一審・二審が基本給や賞与の性質・目的、労使交渉の経緯を十分に考慮せずに不合理と判断した点を違法としたが、自らは詳細な判断を示さず差戻したため、差戻審の判断が注目されていた。 本判決はまず基本給について、正職員・嘱託職員いずれも職務給の性質が大きく同質であるとし、経験豊富な嘱託職員の基本給が若手正職員を大きく下回る点を不合理と判断した。 賞与についても、支給目的に違いはあるものの、賃金の後払い性や功労褒賞性は共通するとして、定年前の約40%しか支給されない相違は不合理とした。 その上で、基本給(10万円・9万5000円)および賞与の基準額を設定し、それを下回る部分の差額を損害として認めた。 また、労使交渉については、会社側が説明を拒むなど具体的協議を欠いていた点を認定し、待遇差の不合理性を基礎づける事情とした。 本稿では、特に基本給に焦点を当てて本判決を検討する。 ※ 「差戻審」 控訴審や上告審といった上級裁判所が原判決を破棄した後に行われる再審理。上級審は「原判決には誤りがある」と判断したものの、自ら最終判断を下すには事実関係の審理が不足していると考える場合がある。そうした場合、上級審は事件を下級審に戻し、再度審理することを命じる。これが差戻しであり、その後に行われる審理が「差戻審」である。
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